Kinejun motion picture times #641 (October 1, 1974) 
和田矩衛 / フジテレビの「世界の舞台裏」数篇の佳作をさぐる (キネマ旬報 1974年10月上旬号)
kinejun 641
4月7日からフジテレビ系列で日曜午前に放送されている劇団四季制作の「世界の舞台裏」(30分) は企画に惹かれてみてきたが、26本シリーズのうち18本と放送不能の1本をみる機会をえたので、ここに意欲的で秀れた作品も多いこのシリーズを記録しておきたい。 
 
「女優サラ・ピカソ」(6月30日放映) は画家ピカソの息子クロオドの前妻が主人公である。・・・・阿部博久監督、古本久之撮影のコムビは総じて鋭い映像感覚で、現代社会の歪みや、未完成のエネルギーに斜めの角度から切りこんで行くようなところがあり、面白い。 
 
「黒いキリスト・ハーレムの兄弟たち」(8月11日) はクリスマス公演前後の黒人前衛劇団のリハーサルと公演を追ったもので、企画の意図と取材対象とが一体になったところから生まれたテレビ・ドキュメンタリのダイナミズムがみごとである。・・・・
 
「福祉国家という劇団」(8月25日) は福祉国家というふしぎな名を持つイギリスの前衛劇団が田舎町で、街頭の廃棄物を拾い集め、それでオブジェを作り、それを燃やすことにヒロシマと現代というテーマをみつけているという公演活動を追っている。・・・・ 
 
この三篇に比べると「ビートルズ王国の若者たち・バッドフィンガー」(7月7日) [阿部博久監督、古本久之撮影] は映像処理のみごとさのみが印象に強い。 
 
 
以下
「激情のフラメンコ」(8月18日)
「哀愁のファド」(9月22日)
「砂漠の芸術祭」(9月1日) の紹介が続き、 
 
 
放送中止となった「大英帝国のアングラ・ピープルショウ」は、いまのテレビコードでは放送不能であろう。しかしこのシリーズの企画意図はよく出ている一篇である。編集し直せばよいだろうが、フジと四季の話合いがつかなかったらしい。他にもノー・ナレエションのものにフジ側は無理にナレを入れさせたそうだが、ドキュメンタリとは単なる紹介フィルムではないことに思いを致して欲しいものである。 
 
「モンマルトル物語」(7月14日) 取材が安易である。この武市好古・瀬川浩の監督/撮影コンビでは 
「遺跡でオペラを!」(6月23日) 「ポップス・イン・パリ」(5月19日)  「パリモードの旗手」(4月14日)とどれも頂けない。 
 
富沢幸男・瀬川コムビはすべて舞台表である。
「ベルリンドイツオペラ」(4月7日) 折角舞台裏にふさわしい舞台監督をみつけていながら追わずにいるのは惜しい。
「ウィーンの街の物語」(5月12日) 華麗なだけである。 
「武士道とは」(6月2日)  演出の裏を撮ればよいのにこれでは珍妙な舞台の録画にすぎない。 
 
広瀬涼二・山崎裕コムビは無難である。
「ボクのチャイコフスキー」(5月5日)
「華麗なる民族舞踏団」(5月26日)  
被写対象の体臭のようなものに触れて行ってくれたら面白いものになったであろう。
 
 
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上の批評を読むと、監督/撮影 によって当たり外れがある? バッドフィンガーは当たり組のようです。 

こんな本も存在するのかも 

書籍名 世界の舞台裏: ドキュメンタリー番組解說書
寄与者 劇団四季
出版社 劇団四季映画放送部
 
 
 
 [世界の舞台裏] ビートルズ王国の若者たち バッドフィンガー (1974年7月7日放送)